大阪狭山市市民活動支援センター移転式典と、
記念講演要旨


                                  吉田市長挨拶

本日は、大変お暑い中にも関わらず、市民活動支援センター移転に伴う記念式典にご来場頂きありがとうございます。 

平成14年に市民活動支援センターを、社会教育センターの中で、公の形で立ち上げました。 しかし、一年で公設公営にきりかわりました。 

私は市民活動支援センターは、一つの溜まり場的でなければならない、人が集まってくる、そして情報もついてくる、そこに来た人が新たな情報を持って帰るという、いつも人が出入りしているような場にしたいと思っています。 
そのためには、社会教育センターの1Fフロアーで事務所をもつのは、どうしても環境的にもそぐわない。冬場は寒い、込み入った話をするにはスペースもない、或いは週二日は休み、夕方6時頃には閉めてしまう等と市民の公益活動を支援するにための条件が満たされていないと感じていましたところ、一昨年大阪府から府民健康プラザの跡地を市に無償で提供するという話がきましたので、これを支援センターに活用しようとのことで、本日このような場が設けられることになった次第です。 

環境は整いました。 後は、人が集まってきて、情報が集まり、元気のある市民が一人でも多く地域で活躍してゆく場づくりが必要ですので、そのためには、事務局スタッフだけでなく、一人でも多く活動の場に集まっていただくことが必要です。

本日ご来場の皆さん方、一人でも多くの方に声をかけていただき、この場所に軽い気持ちで遊びがてらに寄っていただくことがまず必要でないかと思っています。新しく生まれ変わった市民活動支援センターを育てていただくのは皆さんであり、皆さん方が育ての親となっていただきますよう切に願っています。



すてきにチャレンジ
マスターズな生き方と市民活動



講師
社会福祉法人
大阪ボランティア協会
理事・事務局長
早瀬昇氏

すてきにチャレンジ、マスターズな生き方と市民活動というお題をいただきましたが、マスターズな生き方とはなんだろうと悩むじゃないですか。

マスターズな生き方って何だろう?

マスターズとは、いろいろありますが、辞書をひきますと、多分一番関係のあるのが、「何々を自由に使いこなせる」というのが近いパターンではないでしょうか。 
自分自身、私自身を自由に使いこなす、人間らしい生き方をすすめていける、人生の達人、そういう方がマスターズな方です。

そのことと市民活動と何が関係あるかを話せ・・・ということだろうと勝手に解釈したわけですが、市民活動に関るのはその生き方を、社会のなかで、自分の生き方を自由自在に使いこなし、自分のシンドイ面や得意な面を活かしながら、自分らしく生きていくことに、市民活動参加の経験は大きな意味があると思います。

障がいのある人たちに学ぶ生きる視点

マスターズな生き方と市民活動というテーマを考えるとき、私にとって一番大きな出会いは、障がいのある方との出会いでした。

今はどこの地下鉄の駅にもエレベーターがついていますが、日本で一番早かったのが大阪です。 障がいのあるひとは、階段があって地下鉄に乗れないじゃないか・・・・私が「誰でも乗れる地下鉄」というボランティアグループに参加して、当時大阪交通局と随分やりあいました。 最初のころは全く理解をえられませんでした。階段を車椅子で降りることがどんなに恐ろしいか一度やってみてください。

このような経験から、最後は財政局を説得して、結果的に新設の谷町線の喜連瓜破駅に最初につけました。 いまや高齢者の方が増え、今後ますます増える。ということは障がい者が増えるということですので、大変喜ばれています。

日本の身体障がい者は330万ほどですが、その約7割の方が高齢者です。
将来は大阪府民の3割は65歳以上になるわけですから、今エレベーターつけているから乗客がくる、それは、私達の運動があったからです。

社会福祉における自立の変遷

1.他人の世話にならないこと

障がい者をお世話するのには、自立が大切です。あんまりお世話をしすぎてはいけません。障がい者がお世話になってばかりでは、自分で行動する力が落ちてしまいます。 お世話にはその間合い・バランスが難しいのです。

2.精神的な自立の保持-自己決定権:自分らしさを持って生きること

じつは、障がい者とお付き合いすることで教えてもらったのは、たしかにリハビリも重要です。しかしそれを徹底し過ぎると、自立を妨げることになる。なかには重い障がい者の人もいます。 例えば、「五体不満足」を出版した乙武洋匡さんの例ですが、日本の障がい者に対する感覚を変え、初年度で400万部も売れた本の著者です。 

3.自信を保持ー依存による自立介護をうけて自立する時代

               
ndepence by Dependence 依存による自立、つまり人に旨く頼むことによって自分らしく生きてゆく、この価値観に出会ったのが市民活動でした。

自立援助の視点とは・・・

セラピストの三好春樹さんが書いた本で「教師はなぜぼけるのか」があります。
人間は加齢すると、色々なものが弱ってくるのですが、学校の先生は、今頑張ると明日が良くなると言う価値観でがんばってきた。 加齢により不自由になりリハビリをしなくてはならなくなっても、今を頑張る・・・。ところが明日が良くなる価値観を持っていても、今より来年の方がハンディが重くなる、そのギャップがキツイのです。自分で行うことが自分に受け入れられなくなり、それが原因となってメンタルな背景から認知症になってしまうパターンです。 

福祉的自立現実を受容し、自信を確立できるように援助すること

旨く人に頼ってしまうのは強いことです。自分が自分としてあったらそれでいいという考え方です。 そのためには、簡単な条件があります。 それは自信です。 自分がそれほど劣っていないと思う自信力です。 

「五体不満足」の著者、乙武さんにはそれがある。 生まれたときに病院は母親になかなか逢わせなかったのですが、7日目に対面したときに母が言ったことは、「まあ、可愛い」でした。 それ以来自分が成長するプロセスのなかで、母に「まあ、可愛い」と言ってこの世に迎えられたことを教えられ、そのことが彼に自信をつけ、いわば爽やかに旨く人に頼りながらも自分らしさを創り出した。 それは凄いことです。

いつか私達はハンディを負いますが、楽しく生きていきたい。その時に障害がある人がマスターズ的な生き方を見つけているのに出会います。 そういう人たちとの出会いが、市民活動ではないでしょうか。

市民活動支援センターの再スタートを考えるとき、とても大切なことがあります。それは、色々な市民活動のなかで、自然保護のような相手が人でない場合もありますが、多くの活動は依頼者のいる、人との活動です。

そこで市民活動では、私達と依頼者の形をどうするかが重要です。依頼者は赤の他人にお礼もせずに依頼したいとは思わないケースが多いのです。 ボランティアの援助を得たいと思う人は少ないのです。

市民活動センターは、依頼者とボランティアが出会う場所です。両者がうまく対等に出会える場が重要です。 

有償・無償の間に人が入ることで、全体の協力関係をセンターが旨くみて、対等につなぐ役割が大切です。 この関係を対等な関係として見直す点で、ひとつ必要なことは、依頼者です。 依頼者のあきらめられない願いに共感するときに、ボランティアが活動する、そういう関係が成立するときに、一緒に共同して、同じ仲間になることが実現するのです。

市民活動にはいろいろな出会いがあります。いろいろな人の人生と出会える機会の場があります。 そのような出会いの場がドンドン広がっていくのがこれからの大阪狭山市の動きであり、その拠点としての市民活動支援センターがあるのではないでしょうか。




このあと、第二セッションとして、
早瀬講師ご自身の進行司会による
、吉田市長、林田センター長との三者鼎談がつづきます。

敬称略

市民活動支援センターのこれから・・・・・三者シンポジウム

早瀬


南部では大阪狭山はかなり早くから支援センターがつくられていますが、どんな思いで立ち上げられたかをお聞かせください。

市長


地方分権という言葉がありますが、平成12年に地方分権一括推進法が施行され、国でしている仕事を地方に回す仕組みが進行しています。他方、2007年問題があります。2007年に日本の人口が減少に転ずる、もうひとつこの年に団塊の世代が退職してきて超高齢社会が訪れてきます。 

そういった時期には市民活動が必然的になくてはならない位置づけになってきます。したがって早い目に切り替えが効くように、このようなセンターの充実を図ってきたわけです。市役所がしていることを、今度は地域の住民がする。 

地域で市民が何を求めているかを一番良く知っているのは市民です。 自分たちでできる方向の意見を出してもらうことが必要です。 そのような情報の接点として、支援センターにふらりと立ち寄る、こんな役にたつ情報があるよ・・そんなマッチングの発信をこのセンターでどんどんしていただき、ネットワークの拠点としたいと期待しています。

早瀬


この支援センターの運営を受けられたのが、大阪狭山市熟年いきいき事業実行委員会だそうですが、その流れで林田さんどんな手ごたえがあるのでしょうか。

林田


冒頭に市長からご挨拶がありましたように、この4月から公設民営の形で市民の方に委託することでお受けしました。熟年いきいき事業は4年半前に生まれ、その中の大きな活動は熟年大学で、現在は330名の生徒が勉強中ですが、熟年いきいき事業に足を突っ込んでこられた方はおおかた2000名になります。

支援センターは今年から受けたわけですが、結局「熟いき」の人が多いのですが、これからは、若い世代の人にもどんどん入っていただこうと思いますし、市民の活動を支えるという施設ですから、中身も市民がつくってゆくのが基本的なベースだろうと思います。そこが公設公営と公設民営の違いと考えますので、今年の3月までのセンターと一味違うセンターになる必要があると思っています。

じゃ、何ができるかは、やはり公ではできなかったことを、民でひとつずつ積み上げていったらどうかと思います。コピーとか印刷機の利用料金も値下げしましたし、機械力の増強もいたしました。 市長が期待されるような、いろいろな市民活動をするための機材等を取り揃えていただきましたので、これからここで活発な活動が始まると思います。

ほんとの汗をかいてボランティアをされている方をつぶさに拝見しますと、まだまだ勉強が足りないなと感じます。 4月からの準備期間でいろいろな方にもお目にかかって、手探りから新しいものの誕生への、いよいよ具体的な計画をこれから組んでゆこうという段階です。

早瀬


今日お配りした資料に、中間支援組織の必要を書いたレジメがありますが、仲介機関がない場合、自分に合った団体をお互いが探すのはとてもややこしいのですが、中間支援組織があるとすっきりする、これをTransaction costと言い、わかりやすい関係になります。 市場を整備することになり、民間は市場に向いており、それは価値観の多様性を守るからです。 

民間の良さは多様性です。多様な活動をしていて、多様は市民が繋がりあうには、市場を作ればいいのです。 補助金をつければいいのではありません。いかに様々な近隣の支援市場に関する情報がここに集まるかが問題です。 

社会福祉協議会のボランティアセンターは全国のすべての自治体にあります。2800くらいの自治体があるでしょうか。 ところが、最初は民間が先行しました。

民設民営は大変です。 公設公営はあることはありますが、全体の主流は公設民営です。 その数はどんどん増えています。したがって支援センターの名簿を作るのは大変な作業です。 

大阪狭山市の市民活動支援センターも全国の大きな流れの中に位置づけられていることがお分かりと思います。

その中で林田さん、こういう点がなかなか大変だなと気付かれていることがありますか?

林田


やるべきことは、市長ご期待のように、場作りであり、ネットワークづくりだと思います。 具体的にどのように進めたらよいかが悩ましいところです。 我々の市民ボランティアとしての経験の浅さからくるものでしょうが、不慣れな点もあり、今正直告白すると、自らの力をつけることと、一人でも多くの方に頼りにされるセンターにしなければならないとの両絡みです。 

現在いるスタッフは、それぞれの会社生活では充分プロとして、個々の分野ではマネージメント力もあるし経験もあるのですが、支援活動をコーディネイトするとかの形の経験はまだ不慣れですので、その辺が一番悩みの多いところかなと感じています。 

結局はひとつひとつテーマを絞って専門性を高めて行く必要があり、一方で市民の皆さんからも、もっといろいろな情報を寄せていただき、気安く立ち寄って頂くといいのですが、先ほど先生のご説明の繋ぎのところが、まだ材料に乏しいのが現状かと思います。

早瀬


実は大阪ボランティア協会では、市民センターのスタッフになる為の研修を開いていますが、教科書があるわけではありません。 各論をやっている感じで大変なんですが、今の林田さんのお話を聞かれて、市長その点いかがですか?

市長


「熟いき」にどうしてここをお任せすることになったか・・の経緯ですが、昨年一般公募して三団体から応募がありました。 市民委員二名を含む審査会の審査の結果熟いきになった透明な選択をしました。 

林田さんが仰った市民活動の不足からの不安については、全然心配していません。 そもそも市民活動は、それぞれの団体が専門性をもった活動ですから、いろいろなことを知っている団体はほとんどない筈です。 それは役所の仕事ですから、そこに役所と市民ボランティアとの協働が必要となるわけで、役所はオールマイティに情報もつかんでいますが、市民団体は専門性を持った活動しているわけで、そのことだけで支援センターに能力の差がでるとは考えません。

むしろ、「熟いき」の方々は、それぞれ組織のなかで、長年人間関係、経理、あるいはマネージメントに経験された方ですから、コーディネイトする力は、民間のなかで沢山経験されています。

むしろ若くからボランティア一本でこられた方より、マネージメント能力の点では優れた点をお持ちなので、「熟いき」に決まったことで何も心配はしていませんしむしろ期待をしているところです。 自ら力をつけることと林田さんは仰いましたが、それらの新たな分野では、市民活動をされておられる方との交流を通じると力になってきますので、多少時間がかかっても仕方のないことと思っています。

早瀬


理解をもってエールを発信されておらるのはいいことですね。

実際は、運営スタッフの研修なども大変でしょうし、あと情報が集まってくるのは、言うほど簡単ではありません。 ネットワークはよく使われる言葉ですが、ネットワークと言うと組織と受け止められている向きもありますが、ネットワークは面識です。 

これは、フットワークの足し算です。ひとつひとつの団体に出会って、その中からネットワークという関係ができてくる、何かのとにきそれが広がる、そんなものです。 大阪狭山にそうゆう関係どうつくるかが大切です。

運営のスタッフに、いろいろな大阪狭山でがんばっている団体が参加するって仕掛け何か考えられているのですか?

林田


いまからですが、一生懸命歩いているところです。

早瀬


行政の職員との協働はこれから重要ですが、行政の方が出向されている関係はあるのですか? 大阪ボランティアセンターには、今、佐賀県と三重県から職員の方が出向でこられ中間支援センターの仕事を学んでおられます。
スタッフの研修のことで今お考えになっていることはありますか?

市長


スタッフとの交流は、市民協働と言う担当部署があります。密接な関係で進めてきましたし、これからもそうですが、市役所内部では、市民協働に移行できる事業は、かねてから見直しをかけています。 

市民協働が中心になって、直営でなく協働でできることを別の部署とヒヤリングを重ねながら進めています。

情報を市民活動支援センターに行政から提供することによって、ここにくれば行政との協働の情報が仕入れられる、ひとつには、市民公益活動補助金がありますが、そのような情報も市民活動支援センターを中心にしていきますので、そのような情報は、この支援センターを通じて市民に発信しています。

早瀬


大阪府でも、大阪ボランティア協会を通じていますが、そのような拠点になればいいですね。大阪府の活動はかなり早い時期から進んでいます。 たとえばコミュニティ・ビジネスの支援なども、兵庫県神戸市が一番早かったのですが、いまでは施策の規模やレベルでは大阪府が兵庫県を抜いています。

そのようにレベルが高いのですが、行政とNPOの協働を評価するシートを去年つくりました。 これは、お互いに評価します。委託を受けたNPO団体は担当の部局を評価し、行政はNPOを評価するシートを作っています。 それをお互い交換して意見交換します。 このような情報を共有されるといいと思います。

最後に、林田所長と市長にこれからの抱負と期待を一言。 

林田


冒頭から先生のリードでお話が進み、市長から我々に対する期待を述べられましたが、まだまだ新米ですが、これから一所懸命頑張っていこうと思います。

市民活動をなさっておられる団体や個人と集まる拠点だけでなく、これから現在働いておられる方も、センターに立ち寄っていただけるような場所にしたいので、ぜひ市民のみなさま、遠慮なく立ち寄っていただく、我々も情報を溜め、発信していこうと思っています。

市長


ぜひそのようなセンターにしていただきたいと思います。 市民の方々が市民活動に意識をもっていただき、またその活動をしていただく、それを導いてゆく過程が、生涯学習だと思います。 

大阪狭山市民が生涯学習を通じて地域で、地域の人たちを支えてゆく、そして、支えている人たちも元気で地域で活躍できるわけですから、大阪狭山市全体の元気、活気につながるものと思っております。

その意味でもこの市民活動支援センターが、市民の生涯学習の支えになり、一人でも多くの市民が意識をもち機会を持つ活動を積極的に展開して欲しいと思います。 先ほど早瀬先生が仰ったフットワークの足し算、実際「熟いき」の人たちは足であちこちで歩いて、いろいろな人たちに声をかけて、この拠点のことを話しておられます。 その点では大いに期待しています。 

市民活動支援センターと市役所が仕事を半分半分する、それ以上の勢いで大阪狭山市民の生活を支える、市民活動支援センターの拠点づくりとなることを期待しています。

早瀬


移転したオープン記念にお招きいただきありがとうございました。

                             



大阪狭山市市民活動支援センター