共同募金が始まって62年になる。
最初の年の募金総額は約6億円、現在の貨幣価値に換算すると千数百億円になるだろう。
大変な金額だ。
ところが、平成7年の260億円をピークにして、低減傾向に歯止めがかからない。
その要因はいろいろ指摘されている。
募金の大きな柱は個別募金だが、自治会の組織率が下がっている上、
半強制的に自治会単位で一括納入することへ反発が強まりつつあること。
長引く不況で厳しい経済状況が続き、住民も企業も疲弊していること。
他にも多様な募金があり、募金も「選ばれる時代」になってきたこと。
配分の仕組みがよく理解されず、その使途の不明朗さに対する批判が強まってきたことなどがあげられる。
この状態を打破すべく、中央共同募金会の企画・推進委員会が
「地域をつくる市民を応援する共同募金への転換」を答申し、
それを受けた理事会・評議委員会で答申を実行するとの決定がなされた。
2007年5月のことである。
それで募金額は上昇に転じたか?
答えはノーだ。
まだ最終的な結果は発表されていないが、
2009年度は200億円を割り込むかもしれないというところまで落ち込むだろう。
「地域をつくる市民を応援する」ということは、
市民が集めて市民が使うという寄付と助成が循環する仕組みをつくるということだ。
これまでは、都道府県共同募金会の権限が強く、
募金活動の最前線を担っている市町村や、小地域の人たちの意見が配分に十分反映されているとは言い難い状況だった。
そこで、今まで「支会」と呼ばれていた市町村の組織を「市町村共同募金委員会」と改めた。
そこをボランティアグループ、当事者団体、NPOや地域活動を行う団体など、
多様な人々の参加する場にし、市民自らが地域課題の解決に向けた助成計画を策定し、
その計画に基づいた助成(これも用語を配分から改めた)にもっと重点を置こうという取り組みだ。
この取り組みは改革の一歩になるものと期待したいが、課題がいくつかある。
ひとつは助成事業選定の経過をもっと透明にすることだ。
これまでの都道府県共同募金会の配分委員会の選定作業はあまりにも不透明だった。
「社会福祉協議会への配分が多すぎる」とか、
「配分実績のある団体への継続的な配分が多く、新しい取り組みへの配分が少ない」といった批判の一因でもある。
どこに助成するかという「結果」と共に、
なぜそういう結果になったのかという「経過」を示すことがもっと求められるのではなかろうか。
いまひとつは募金方法についてだ。
募金手段を多様化しようという方向は間違っていないと思うが、ネット基金、自販機募金、クレジットカード募金など、
みんなどこかの二番煎じ、三番煎じの取り組みだ。もっと斬新な手法の開発に知恵を出してほしい。
また、募金は基本的に「個人の自由な意思」に基づいて行われるべき行為だ。
個別募金の強制感を伴う集め方は早晩改めるべきだろう。
ボランティア活動や市民活動が社会的に大きな力を持つ第3のセクターとして発展することが期待されている中、
それを資金的な面で支える仕組みとして、寄付の文化を育むことは大切だ。
今年のポスターには「じぶんの町を良くするしくみ」と書かれている。
今回の改革が機能して、そんな仕組みになることを期待を込め注視したい。