大阪狭山市市民活動支援センタ-事業
平成26年度第1回市民活動支援セミナー
兼 第10期まちづくり大学公開講座

地自治を回復し、まち・むらの課題を
まち・むらの力で解決するために
協働と総動の基礎を再確認する

講師


I IHOE [人と組織と地球のための国際研究所]代表 

川北 秀人

司会&コーディネーター
大阪狭山市市民活動支援センター 
まちづくり大学主担  松尾
日時 平成26年12月6日(土)
 13:30〜1540
場所 SAYAKAホール2F大会議室
参加者  まち大期受講生 43名 
市議会議員 2名
円卓会議関係者 8名
まちづくり研究会関係者 8名
市役所関係者 12名
しみんのちから市内活動団体  5名
スタッフ 14名
合計参加者 90名 

   

 講演要旨

官民協働による地域づくりについて、全国各地の事例を紹介し、少子高齢化問題とその対策について触れます。

市民活動支援セミナーは、
大阪狭山市市民活動支援センターの年間催行として、
平成19年度(2007年)から毎年2回〜3回継続しています。

セミナーの過去の要旨参照は
「講演・セミナー関連紹介」(Click)からもご覧いただけます。

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私は高石市出身ですが、堺市内の高校を卒業し、今は東京に住んでいます。

毎年、全国各地でさまざまな地域にお招きいただいていますが、今日のように「地域づくりをどう進めるか」についての勉強会は本当に貴重です。こういう機会を与えていただいたことに、重ねて感謝します。

この勉強会には、年間100回以上お招きいただいていますが、2010年ごろから、少し様子が変わってきました。それまでは、環境や福祉など、分野別に活動している団体からのご依頼が圧倒的に多かったのですが、2011年、東日本大震災が起きた年以降、ご依頼の半数以上が、町内会や自治会などの連合会です。その背景には、今や町内会・自治会は、行事(イベント)のためではなく、独居高齢者の見守りや配食などの事業(サービス)が求められるようになっているからでしょう。

この傾向は、太平洋側より、少子多老化が進んでいる日本海側の方が切実です。そんななかで、太平洋側であるご当地で、本日お招きいただいていることを、ありがたく思います。

先日の長野県北部地震では、深夜の地震直後に避難所に逃れた人たちが「あの家のお婆ちゃんがまだ来ない」と気付き、「きっとあの部屋に寝ている」と消防団の方たちなどがその場所を探したら、発見・救出できたということです。これを、プライバシーがないと考えるか、それとも人「交」密度のおかげで助かったと考えるか。同じようなエピソードは、中越地震のときにもありました。

一方で、地震で助かった方が、仮設住宅で孤独視されるというケースもある。災害時だけでなく、生命やくらしの安全・安心は、人口密度でなく、人「交」密度で大きく異なります。

かつて大丈夫だったことが、これからはもう、大丈夫ではありません。過去と未来はどう違うか。三つの観点から指摘すると、                                 
AAA 世界経済の中で、日本の存在(シェア)がどんどん小さくなっている。
BBB 日本の人口構成の問題、つまり多老化。
CCC 日本で高齢化するのは、人間だけでない、つまりインフラの高齢化。

という問題があります。

CCCについて、インフラの高齢化で思いだされるのは、中央道トンネル壁崩落事故ですね。国土交通白書の2010年版と14年版では、ともに「インフラの高齢化」を指摘しています。

行政が所管する15m以上の橋は全国に14万8千箇所あり、うち法定耐用年数(約50年)が経過するものは、2020年には25%、2030年には38%に達します。

ちなみに本日、大阪狭山市役所の行政職員の方で、今後必要とされるインフラの維持・補修費用をご存知でしょうか?(沈黙)

本市のウェブサイトには、まだその計算は公表されていないようです。中央道のトンネル事故があった翌月(131月)時点で、全国1743市区町村中、計算が終わっていたのはたった110市町村。

ここで問題なのは、これから一体、維持補修費にいくらかかるかがわかっていないことです。これからつくるものは待ってもらえるかもしれませんが、今あるものを「明日から使えません」というのは難しい。使い続けながら維持補修するにはどうするか、という問題です。

2020年から2030年までの10年間に、一体いくらかかるか。ざっくり試算でも130兆円です。今年の国の予算が100兆円、そのうち公共事業予算は10兆円しかありません。つまり新規の公共事業を全て止めても、維持補修費に足りないことになる。大阪狭山市では、どうするのでしょうか? 

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続いて、本市の少子高齢化、正確には少子多老化について、具体的な数値をご覧いただきたいと思います。大阪狭山市も、これまでの20年と、これからの20年は、大きく違います。

2010年までの国勢調査と、国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、1990年から2030年までの40年間に、子どもは半分になり、高齢者は4倍に増えます。高齢者数は2020年まで急増しますが、その後、2030年までの10年は微増。そのころには多老化のピークは過ぎているのでは、と思われるかもしれませんが、問題はその構成です。

2010年の国勢調査と介護保険利用実績調査によると、85歳以上の方のうち、およそ4人に1人が、要介護3以上。本誌では、介護保険制度がスタートした2000年に677人だったのが、2010年に1437人、2020年に2750人、2030年には4538人。2000年を100とすると、2030年は670%にも達します。                         
2020年の本市の高齢者率は30.2%と、全国平均よりも5年早い水準に達し、高齢者一人を支える生産人口は、わずか1.9人に過ません。 地域で総力を挙げて高齢者の健康づくりを進め、医療や介護のお世話にならず元気に活躍してもらえるよう、促さなくてはなりません。 

そんな加速的な多老化が進んでいることを正確に認識し、行政の方たちも、「全国平均の5年先を行く」ことを前提に、進めていただきたい。 せっかく見通しの数値がでているのですから、それに基づいて、住民の方々と正確にコミュニケーションする習慣を持ったほうがいいのでしょう。 

では、東京オリンピックが開催される6年後の2020年に、本市がどうなっているか。高齢化率は3割を超え、なんと全国平均を抜いてしまいます。つまり、国の政策を待つのでなく、大阪市や堺市をみて追いかけてはダメ。今までの延長線上ではありません。それを踏まえた地域づくりを、地域も行政も進めていかねばなりません。住民の6人に1人が75歳以上というのは、現在の島根県と同じ水準です。 

スライド8番の下から2行目の「高齢世帯率」とは、本市のおうち100軒のうち、65歳以上の一人暮らしまたは二人暮らしが、どれぐらいの比率になるかという比率です。 わずか14年前の2000年に10%だったのが、2010年はで19%、IIHOEによる「マイルド」な予測でも、2020年には26.6%と、実に4軒に一軒の割合になると予測されます。同様に、後期高齢者のみで構成される世帯の比率(同じスライドの一番下の行の「後期世帯率」)も、2000年にはわずか3%(30軒に1軒)だったのが、2010年には7%(15軒に1軒)、2020年には13%と7.5軒に1軒の割合にまで高まると予想されます。 

これまで地域は、子どもたちのために盆踊りをした。でも今後は、子どものためのイベントではなく、高齢者のくらしを支えるための事業を担える町内会・自治会に進化しなければなりません。もう一つ気になっているのが、同じ表の下から6行目にある「後期高齢者単身率」。

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歳以上の後期高齢者のうち、お一人ぐらしの方の比率です。全国平均18.4%に対して、本市は20%)その1行上にある通り、合わせて1101人のうち、男性が249人、女性が852人と、男性1に対して女性は3.5ぐらいになります。

この方々の通院や買い物をどうするか。後期高齢者の運転免許保有率(全国)は、男性が54%、女性はわずか8%。これを含みおいた地域づくりを進めなければならないのです。

もう一つ驚いたのは、歳出は7年間で1割以上増えているのに、職員数は1割近く減っていること。職員さんたちの実感から言えば、わずか7年で仕事が2割増えた、というところでしょう。では今後、職員数は増やせるか。無理だと思います。生活保護などの扶助費が、同じ7年間で20億円近くも増え、歳出全体の2割を超えているからです。

スライド10枚目は、本市の集落の姿を、グラフにしたものです。2010年の国勢調査から、字(あざ)単位で、横軸にその集落に住む高齢者(65歳以上)の比率、縦軸には18歳未満のお子さんと同居する世帯が占める比率を示したものです。 

赤い丸は全市平均の推移ですが、左から順に2000年→2005年→2010年→2015年→2020年。中央の2010年で交差するように縦と横に1本ずつ線を入れていただくと、本市の各集落は、左上=子どもがとても多い、左下=子どもも高齢者も少ない、右上=子どもも高齢者も多い、右下=高齢者がとても多い、という4つのパターンに分けられるということがおわかりいただけるかと思います。
それに地名を入れてみたのが、スライドの11枚目です。右下の岩室2丁目、池尻2丁目、東野中4丁目といった地域は、隣接していなくても、高齢者率と子どもの同居世帯率という2つの地域特性の共通性が高い。なのに、行政の方たちが会議を開くときには、当たり前のように地区割で集まるように求められる。でもこれからは、「地域特性割」で集まってもらう方が、似た状況のところ同誌から学びあえるという意味でより効果的だということがおわかりいただけると思います。 

全市平均の推移をみても、これだけのスピードで変化しています。こんな状況下で町内会・自治会の会長を一年交替していては、地域がもたない。三役になったら4〜5年は覚悟していただいて、役を引き受けるのではなく、地域を経営してもらうという考え方が大切です。

同様に、自治会・町内会は今後さらに、行事を半減して、事業=福祉+経済を増やし、共通の「基本機能」を守りながら、独自の「魅力づくり」を進める必要があります。

人口減少も多老化もさらに進む時代に、規模の縮小が避けられない行政だけで対応できそうるはずがありません。ならば地域の力を育てていくしかない。 地域に求められる活動・事業を自分たちですることによって、住み続けやすい地域づくりを、今、できる時から進めるのが大事です。

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まちづくりや協働は、手段にすぎません。ではその目的は何を、先輩たちに聞いてみました。まず、「あいさつできる関係づくり」。次に、災害発生時への備え。阪神大震災でも、東日本大震災でも、避難所の運営は、行政でなく地域ぐるみでしたね。

もう1つは、子どもたちの世代が、誇りを持って暮らし、働くため。これは本市でもぜひ進めていただきたい。地域の大人が、子どもたちの目の前で、本気を出す機会をつくりましょう。農業でも、ものづくりでも、サービス業でも、「このまちで大事なものは?」とたずねられたときに、次の世代と本気で共有できる体験を共有できることが大切です。

たとえば、紙漉き体験。単に漉いてみるだけではなく、自分の卒業証書用の紙を漉いたり、さらには地域の功労者表彰用の和紙を漉くほうが、はるかに進化したものになる。こういった取り組みを地域の共有財産にして、子どもを地域のかすがいと位置付けて、地域の持続性を高めるために本気で向かい合っていく機会を、本学でのみなさまの学びの中で取り組んでいただきたいです。

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元気な地域は、人数や若い人の比率ではなく、そこに住む人の考えていること・やっていること=姿勢が違います。 自分が好きで住んでいる地域の未来のために、本当に大切なことをできるようにのに全力を尽くし、出し惜しみしない、できないふりをしないことが重要です。

全国ほぼ全ての自治体で、「協働は大事だ」とおっしゃいます。

では協働と聞くと、みなさんどんなイメージを描かれるでしょうか? 下図参照

ほとんどの方が、左側のNPOと行政が領域を重ねる図を思い浮かべられることだと思います。

しかし、行政とNPOが組むだけで、問題が解決し、よりよい地域づくりが進むでしょうか?さらに言えば、NPOを待っていられない地域もあるでしょう。 そうなると、地域の総力を挙げて地域を守り抜いていく、右側の図に示した多様な主体による協働=総働が求められます。

★北海道札幌市内には、中学生が冬の朝に、地域の独居後期高齢者のお宅に寄り道して、ごみステーションまでのごみ出しをお手伝いする、という事例もあります。このように子どもも学校も、NPOも、地域の住民も、新聞配達や信用金庫など事業者や金融機関の方も、総力で地域を守り抜いていくのです。

★また、島根県雲南市の地域自主組織や沖縄県那覇市の真地(まーじ)団地自治会など、自治会・町内会が、くらしを守り抜くための福祉と経済=事業はやるけれど、行事を減らしつつある事例も増えています。

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★豪雪地である岐阜県高山市の社会福祉協議会が、かつて学校教員用住宅だった建物を借りて、厳冬期限定の共同住宅「のくとい館」とした事例もあります(スライド16枚目参照)

締めくくりにお話ししたいのは、「自治は誰がするのか?」について。

★みなさんご存知のマツモトキヨシ。その創業者の松本清さんは松戸市市長時代に「すぐやる課」を創設した人です。それが結果として、「行政のコンビニ化」を促してしまったと、僕は考えます。本来行政とは、未来に備えることが基本的な仕事。「困ったら頼む、もらえるものはもらう、払っているよりもらう分を多く」といった住民に言われるのを待って動いているだけで、良いまちになるはずがありません。 

本市も歳入に占める税収の比率は4割程度、残りは交付金と借金。 右肩上がりの時はそれでもよかったかもしれませんが、やがて住民は、自分たちで自治しようとする気持ちも、力も、役割もどんどん失い、いつのまにか「自治体」なのに行政にお任せしようという機運になり、与えられるものを選んで受け取るだけ、という自治の消費者になってしまっていないか。すると、意欲・機能・力の3つをリハビリをしなければならないということになります。

自治のリハビリには、先ほどご紹介したような「これからこうなる」とというまちの予測を立て、「すくなくともこれがないとこのまちは生き残れない」ということを掘り出し、「このまちに住み続けたい」という積極的な気持ちを引き出すことが必要です。そのためには、話し合って決め、実践し、後継者を育てる力を育てるしかありません。

あたりまえの話ですが、5年経てば、みなさんも周囲も5歳、歳を取ります。すると、出来なくなること、難しいことが増え、時間もかかるようになります。 徘徊などの突発事項も増える。その場合、何かあった時に対応する力が求められます。どんなイベントを減らし、どんなサービスを始めるかを、冷静に見極めていく必要があります。 地域にあるさまざまな団体が、それぞれバラバラに活動するのではなく、地域のための役割として、一体的に活動することが大切です。

では、地域はどう変わるべきか。人口が減り、85歳以上の数が増えるなら、時間の使い方を変えるしかありません。すると大切なのは、行事と組織と会議の棚卸しです。

ある地域の研修にお招きいただいた際に、ご参加くださった町内会長さんから、「行事が大変」と伺いました。なぜ行事が減らせないかというと、各行事を司る組織があるから。その会長さんに、おひとりで何役引き受けていらっしゃるかをたずねると、なんと12役!それぞれのお役で会議があるわけですが、各組織の会議時間を通算すると、年間で40時間。1日8時間として5日、つまり1週間分。それが12役ですから、なんと会議だけで、年間3か月分タダ働き!ならば複数の組織の会議を「合同会議」にして時間を節約し、浮いた時間を、地域で動くために充てていただくしかありません。 

このように、小さな地域でも、暮らしに必要な活動を少しつづ増やしていくことを「小規模多機能自治」と呼んでいます。 最近、その必要性への共感が広がっており、地方創生担当の石破大臣も、同様の趣旨を踏まえてくださっています。

地縁団体は、行事から事業へ、役としてではなく経営として自治力を高めていく。すると行政も、住民の要望を待って対応するのではなく、定量的な情報を示すとともに、地域の自治を促す基盤づくりをすすめていただきたい。ぜひ、本市でも、早く、着実に。
講師提供による講演Pdf版 Slide (左Click)


                                
  大阪狭山市市民活動支援センター

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