市民活動支援センタ-事業
平成24年度第1回市民活動支援セミナー


改めて「参画・協・自治」を考える

講師


豊中市副市長 
田中 逸郎氏

司会&コーディネーター
大阪狭山市市民活動支援センター所長 白井 隆
               
日時
平成24年6月16日(土)  9時30〜11時10分
場所
SAYAKA ホール LS会議室

参加者    まち大8期受講生 26名 
一般参加 12名
円卓会議関係者 16名
市会議員関係者 9名
市役所関係者 21名
スタッフ 15名
合計参加者 106名 

     ↓
  U Stream 映像配信資料
(↑をCrick)

音声版のみはこちらで (←Click)

講演要旨掲載
講師未見承

講演要旨                

9:37

ご紹介いただいたように私は市の職員です。 市役所の仕事の中で学んだことを、 またご紹介の大学院での学びでは、現場の仕事を理論化・体系化したことと、大学院での学者による理論を現場化する、この双方向をやってまいりました。

その経験を基に、今日は主に豊中での実践の取り組みの中から感じたことを中心にお話します。

現場を理論化する・・・理論を現場化する・・・など、お手元のレジメにもあるように大変理屈っぽいことがぎっしり詰まっていますが、これは後刻何かの参考の資料としてお使いいただけたらと思います。

ところで、豊中に行かれた方おられますか? 挙手・・・ありがとうございます。 伊丹空港あり、千里ニュータウンありの豊中の特性は、時代時代によりいろいろな課題が混在しますが、決して一番のバスに乗らない、他の自治体の動きを見ながら、バスにも乗り遅れないことで全国に名を知られた自治体です。

千里ニュータウンも6割は吹田市だが、千里中央は豊中市、伊丹空港も儲かる空港ビルは豊中市、滑走路は伊丹市といった具合です。  なぜそんなことになったいるか、それは市民のちから地域のちからが強いからで、豊中市が歴史の舞台に現れるのは、万葉集、その他新古今にも地名はでてくる交通の利便のある場所、それが豊中です。

9:41
では、
レジメ1ページの「はじめ」にある三項目の●
●90年代以降の地方自治体をめぐる様々な動きから、
●1995年の阪神淡路大震災に起因するV活動とNPO地域プラットフォーム/ラウンドテープルの創出を経て、
●公・共・私の連携による新たな自治の仕組みづくりに至る自治と分権の両面から取り組む公共の新たな協治システムの開発に至る流れを説明しています。 ここらは皆さんご存知のとおりなので後でご覧ください。

その下段に、豊中市が進めてきた「豊中市における参加・参画と協働の歩みと自治の仕組みづくり」の潮流を、罫線で囲み年表風にまとめてあります。 これからお話を進めていく場面で何度もこのページを参照に戻ります。

そこで本日の参画・協働・自治のテーマを2ページでみて頂きます。

1.市民参加⇒なぜ「参加」から「参画」なのか?

まずこれまでの市民参加制度の現状と制度は、行政が呼びかけ市民が参加する・・・言わば参考意見の聴取に留まっていました。 市民が選んだ首長と議員さんの二元制に任せ、
つまりサービスを受益する立場からのニーズの要求に終始しがちでありアリバイづくりみたいなもの、これでは公共課題・地域課題の解決のための住民参加になっていないのです。 

これからの市民参加制度とは、これまでの公民役割分担を見直し、公共を行政責任領域、住民自治領域、そして市民と行政による協働領域へと再編するために合意形成をしていく仕組みとしてのデザインです。 公共は、行政だけが担うものでなく、民が担っている公共における市民参加も視野に入れる必要があるのです。(写真はClick拡大)

それでよいのか?というのが豊中市の考え方。 原案の作成段階から市民が関わっていき、それを専門家の議会にかけ政策の立案段階から市民参加するのがいいのでははないかとの動きです。 ここから課題や限界を超えるために「参加」から「参画」へという動きと言い方が普及してきたのです。

ところが市民団体の意見は、自分が属しているセクターの意見だけで、地域の総意がどうなるのかは不明なのです。本当はそれを調整するのが議員団体。 自分達の意見が参考意見に留まった市民団体は、サービスの受益の拡大要求団体になってしまいます。 

大和市の例にあるように、市民参加の形骸化の防止として、参加を呼びかける行政に呼応する市民参加の制度は、呼びかけた主体構成の一員になるのが市民参加です。 ここが協働と違う点です。  参画が出てきた所以はここにあります。

市民が呼びかけて、市民が参加する、または役人が参加する条例ができたのが、1Pに戻って、1993〜の豊中市まちづくり条例の制定です。 具体的には「この指止まれ」に賛同する市民が集まる。 役所も情報提供に協力する。 それを構想化する条例で全国でも有名になりました。

しかし、これにも問題化しました。二元代表制での公共を決定する仕組みが問題。 いざ事業の決定実施段階になると、もう一度役所のフィルターにかかからなければならぬことになります。 結局はやるのは役所です。 市民参加や参画があっても、昔の制度ではダメだということで進めたのが「まちずくり条例」なのです。

10:15
そこで出てきたのが2ページの「協働」です。

2.協働の原点

協働とは、違う主体同士が双方のスキルを発揮して、単独の主体では到達できない価値・成果を挙げることを目指す行為です。 得意技を出し合って、行政がするよりNPOの方がサービスの中身がよくならねばなりません。 これには、協働の過程や成果、課題などを具体的に地域社会に情報提供し、広く合意形成を図りながら進めることが大切です。

ところが協働も誤解があっていつも仲良くするのが協働と思う節もあります。市民参加はどちらかに属して呼びかけること、協働は別々の団体のまま、あるサービスや目的をのために一緒にやることが協働です。 ここが協働と参加との大きな違いです。

協働に相互依存の傾向が全国的に現れました。これを防ぐためには、協働のプロセスを公開しながらすることが大事なのです。  これがP1に戻って2004年〜の豊中市市公益活動推進条例です。 「参加」に加え「協働」を制度化し、市民活動の支援・協働をとおして公共運営の仕組みを改革することを目標に設定されたもので、参加と協働のあり方、民主的正当性が課題となっています。

協働の領域に三つの課題が顕在化しました。
(それぞれの事例紹介は省略)
@ 既存の公共事業やサービスを協働する領域
A 豊中市の「提案公募型委託制度」⇒先駆的、開発型協働領域
B 豊中市の政策立案・形成段階からの協働制度「協働事業市民提案制度」⇒ガバナンスのための協働領域⇒議会にかけて成立。
がそれです。

●協働のすれ違いについて

これは実に多くの事例があります。
協働の想いが役所とNPOの想いとすれ違うのです。 その主たる原因は、役所の縦割り行政。 例⇒地域の元気体操⇒体育館は教育委員会、福祉課も関わってくる。ここにジレンマが生まれる所以。 これを解決するのは簡単。 市民協働課に決定の解決化を一本化すればよい。

まあ、試行錯誤のなかで参画と協働を始めたのですが、いままで役所でやっていたことを役所に任せたそのNPOや協働でやってきた効果を誰が判断するのかの問題です。

レジメ3ページ

かくして行政は、「新しい公共」論を振りかざして市民に変革を迫るばかりで、行政が自らは変わろうとしていないところに、市民からの不信感や批判がでているのが豊中市でもあります。 
@協働のすれ違いをなくすために協働に至るまでのプロセスを明確化する
A支援と協働の関係性をふまえる⇒
B協働の評価と目標
を紹介しています。

豊中市の実践事例として、New Commerの図書館廃棄本の再販を原点に、交流の広がりの例(庄内)。

協働の民主的正当性の説明責任はたしているかの評価の仕方は未開発です。
評価の主体者は、協働事業に参加した人だけでなく、その取り組みのコストを負担し、そのサービスを受益する市民です。 だからこそ、市民参加に支えられた「協働」事業への移行が大切です。  

協働とは、出発点も目標も地域社会の公共運営を行政任せにするだけでなく、多様な主体が連携して担う本来の市民自治の姿に立ち戻るための寄り合いの仕組みです。

そのためには、地域諸課題について、様々な主体が協議できる仕組みや場⇒ラウンドテーブルが必要となります。 どのような役割で協議し合意形成を図る、すなわち、「公共的調整・判断を行うための開かれた仕組み」があってこそ、その協働事業が必然化し、参加と協働の民主的正当性も確保できるのです。 残念ながら先ずは個別の事業や協働から出発しており、ラウンドテーブルがないとその実に至らない。

参加と協働とは、出発点も目標も「地域社会の公共領域の運営を多様な主体が連携して担うものへと」変革していくことにほかなりません。

市民はサービスの受益者でもあり税金を払っているので主体者でもあります。そういった市民が協働の効果が挙がったか否かをチェックしないといけないのですが、そこら辺がどうも飛んでしまうのも現状です。

本当は、サービスの負担し受益した主体の市民が、協働の効果をチェックしなければなりません。 豊中では、かならずそれをします。 協働の評価の主体者である市民と、議会はその地域へのお金の再配分を決めなければなりません。 議会はその地域まちづくりの効果をチェックし、それぞれのトータルとして本当に良いのかを決める役割です。

参画協働を進めていくと、もう一度まちの経営者である市民の役割、サービスを受益する市民と同時にまちのありようを決定する市民はどうあるべきか・・・、行政はどういあるべきか・・・、議会はどうあるべきか・・・ここをもう一度問い合わさないといけないということがわかってきました。  それが、1ページに戻っていただくと、このまちの進め方を条例で定めなかればならないなとする2007年からの豊中市自治基本条例制定の運びとなるのです。 

さて、また4ページに戻り、協働とは、
出発点も目標も地域社会の公共運営を行政任せにするのではなく、多様な主体が運営して担うという本来の姿に立ち戻るための寄り合いの仕組みです。

地域諸課題について、様々な主体が協働できる仕組みや場が必要なのです。
どのような役割分担をしていくのか、公共性はあるのか、誰が担うべきかを、対等な立場で協議し、合意形成を図る、すなち、「公共的調整、判断を行うために開かれた仕組み」があってこそ、その協働事業が必然化し成果があがり、参加と協働の民主的正当性も確保できるのです。 そのために必要なのがラウンドテーブルの必要性です。

3. 市民自治の確立に向け

市民自治を確立するためには、公共の運営の仕組みの決定を、今のままで良いのかについて点検する必要があります。 行政用語でいうと団体自治、及び監視する住民自治の関係の問い直しとありようについて今一度問い直し、地域は地域で考えるという新しい寄り合いの仕組みの両方やるという必要性が見えてきました。

そこで5ページの新しい公共の問題点について少しまとめてみます。
新しい公共の原点は、引き続き行政が担うサービスや領域、市民に任す民が主導の公共サービスや領域、一緒にやっていく協働の領域を分けることです。

この一番の問題点は、役所が中心となって引き続きやっていく領域に市民参加があるのか否か、この領域における住民自治はとても大切です。 もうひとつ、これから民の時代任せますと急に言われても、お金も時間もない。従って市民に任せるには、行政は何をすべきかが問われてきます。 行政や市民のやることにお互いに参加する・・こういう問題があることを、このレジメで書いています。

住民自治の中身ですが、
@まちづくり(自治)の理念をみんなで共有する
A市役所を変える⇒行政や議会のやりかたを変える
B市役所と住民の関係を見直し、自治体(行政と議会)に参加・監視し、まちづくりにあたって「自分たちでできることは自分たちでやる」・・・このためのルールなり、仕組みを謳ったものがなければ・・・・自治基本条例の意義はないともいえましょう。
 ここが大事です。

次に6ページでは、住民自らが参加・協働し、まちづくりを主体的に進めることが、住民自治だとういいう概念が変わってきていることを説明しています。(省略)

自治体(行政と議会、そして市民)の新たな役割とは、公共サービスの担い手の多様化により、行政には「公共サービスを提供する主体」であることと、「多様な公共の担い手をCoordinateする」役割が必要であり、この両面を行政に担わせるための「調整・合意形成・進行管理・評価・改善」というトールコーディネイト機能として「市民自治を確立することが重要です。  これがすなわち「自治基本条例」の制定意義といえます。

4.地域自治の仕組みづくり

ラウンドテーブルの必然性に繋がる問題ですが、地域課題や、社会課題が浮上し、公民役割分担に基づく既存の行政サービスだけでは解決できない、またこれまでのコミュニティ相互依存だけでは解決できない問題が浮上しています。

ここに新しい地域自治の仕組みの必要が生じ、各種地縁型団体やNPO等の多様な主体の連携によって地域の諸課題に対応できるコミュニティの再興にことが求められています。

こうした取り組みと連動し、行政や議会も参加し、協働して地域諸課題解決に取り組むことができる新たな地域自治の仕組みをつくるというのが、最後にもう一度1ページに戻って、今年の4月から構築の「豊中スタイルの地域自治推進条例」ということになります。

大阪狭山市では、中学校区ですが、豊中では41小学校区が対象の円卓会議。どちらがいいかわかりません。

10:55
5.おわりに

地域自治を作っていくには、いくつかの課題がありますが、自治会をはじめとする地域諸団体が「繋がる」ためには、地域包括的な組織への一元化するのではなく、まず相互に情報交流・共有できる仕組みや場づくりが有効です。

現状の諸制度には課題や限界があり、行財政改革においても、公共を分権するという方向は明確ですが、地域自治の視点が十分でなく、種々のひずみの克服や新たな地域課題への対応が進まない要因となっています。

そこで、豊中では、コミュニティ再興による住民自治の充実のために「ラウンドテーブル」の設置に加え、「住民自治と団体自治の協議の仕組み」として、「パートナーシップ協定会議」の設置も検討中です。 しかしまだ機能していません。

大阪狭山市も豊中も人口が減っていかない自治体。 住み良い住や学校環境や、都市基盤などいくつかの条件が揃っているのでしょうが、そういう町のよさをきっちりひきつけながら、次世代につなげていくような新しい役所全体の統治(Governance)と、地域自治の二つの仕組みを作っていきたいと豊中市は考えています。




 
  
大阪狭山市市民活動支援センター
  TEL&FAX 072−366−4664
  Mail Address simin025@yacht.ocn.ne.jp