市民活動支援センタ-事業
平成22年度第2回市民活動支セミナー


円卓会議と行政
〜これからのまちづくり推進体制のありかた

講師


近畿大学総合社会学部教授 
久 隆裕氏

司会&コーディネーター
大阪狭山市市民活動支援センター所長 白井 隆
 
本格的な地方分権の時代に備えた「まちづくり円卓会議」が、市民の理解と、努力のもとスタートしました。 市民主導で行政との協働を目指して運営される「まちづくり円卓会議」が、新たな公を担うために必要な推進体制を如何に構築していくかを、各地で展開されている先行事例を交えてお話いただきます。

日時
平成22年11月27日(土)  9時30〜11時10分
場所
SAYAKAホール 大会議室

参加者    まち大6期受講生 25名, 一般参加77名(含む行政関係者) 

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  配布Resume資料
(↑をCrick)


講演要旨掲載
講師未見承済

                                        

             
              講演要旨
9:38  
この4月から、東大阪のキャンパスに17年振りの新しい学部として、総合社会学部を新設した。 うれしいことに20数倍を超えて実に450名定員に1万人の受験応募実数があり、アエラにも記事掲載された。

今年も推薦入学が始まったが、スーパーの開店と同じで、2年目が本当の勝負どこ・・しかし今のところ関係ない。

この新設学部では、新しい社会の仕組みを作れる人材育成が主眼であり、私の受け持ち科目は、
ポスト近代社会論、年14回の講義でこれから来るべき時代がどうなるかを学生に話している。そのポスト近代とは、一言にいうとネットワークの時代と目されていて、今日はそれに沿ってポイントを押さえてお話する。

9:45
1.人任せの社会
さて、近代の特徴とは、地域に対する期待が高まっているものの、人任せの人が増えていることである。 一例がモンスターペアレント。 これを変えるのがここ10年ほどの私の仕事であった。 なぜ自分が動かなくても、問題に対処していけ、なぜ近所付き合いがなくてもやっていけるか・・・である。 行政の制度やお金で問題を解決しようとする人が多く、自治会に頼らなくても生活できるのが現状で、自治会の加入率の低下はそれを物語る。

近代という時代の特徴は、したがって資本主義と法治主義がその特徴と言っていい。 イギリスの1688年の名誉革命、および1789年のフランス革命以来、王国から市民が主権を担うようになったが、勝手な人たちが主権を握ったときはどうなるかの悩みが顕在化した。

そこで二つの大きな流れが現れた。
@ 万人の闘争と謳ったロック⇒ルソー⇒モンテスキューに至った社会契約論とは、国家が世の中を動かす思想であった。 勝手な人たちの集まりではうまくいかない・・・そこで、自分たちの権利をあるところに預けよう・・・その代わりに保障してくれたらうまくまとまるとの考えである。 その預ける先が⇒国家である。 つまり国家にゆだねることで権利を保障してもらおう社会契約思想がそれ。

これに対し
Aアダム・スミスの国富論は、市場が世の中の仕組みを整え始める考え方である。 これが近代が作り出した仕組みであって、@とAとの論争はいまでも続いている。つまり国家が世の中をつくるのか、市場が世の中の秩序をつくるのかである。

しかしながら、@とAとも誰かにゆだねられていることにおいては変わりない。 つまり誰かが解決してくれるという考えが根底にある。

9:55

2.制度の時代からコミュニケーションの時代へ
⇒情報社会論
これを伊藤守氏が「情報からコミュニケーションへの視座の転換」でうまく説明しているので紹介する。

「現在の社会の基本的な部分は、法であれ、規則であれ、貨幣であれ、我々一人ひとりが個性ある主体として相互に交渉しあう苦悩とリスクを軽便するさまざまな制度的媒体によって制御されている」

つまり「現代は、もはやそうした制度に依拠して効率的に物事を推し進めることを許さない。 一人ひとりがリスクを負い苦悩に耐えながら、自己と同様に個性ある他者とのコミュニケーションすることが求められている時代なのである」。 命令の時代は終わり自発的な時代なのであるという。

一人ひとり頑張って他の人と話し合い、調整する時代という訳だが、その一例がオランダの試みShared Space(交差点の話)である⇒信号や標識を撤去することで、自動車の運転手や歩行者の注意力を高め、交通安全を実現する手法のことである。 オランダ人の交通専門家ハンス・モンデルマンが考案した。 自分が自己制御する必要性を見事に示唆している例である。

10:05
3.リーダーとファシリテーター
さてそれを受けて、地域で人任せにしない、責任を押し付けない社会が重要となった。

ところで、みなさんは、会長、副会長、書記、会計のどれになりたいか? たぶん副会長だろう。つまり、責任転嫁の構図とも言われており、組織や行事がうまく運営できないのは、リーダーの責任とする傾向である。 つまり一部の人に責任を押し付けることで、自分を楽にする・・・これを変えられるかが問題である。

みんなをその気にさせる人⇒ファシリテーター(Facilitator)の存在が必要である。
Facilitaorとは、後援者、補佐役、まとめ役を行う人で、組織や集団による問題解決や合意形成、学習促進などのコミュニケーション活動において、共同的、創造的な議論や話し合いのプロセスを設計・マネジメントする人である。

このファシリテーターは、ツボを刺激することで、自然治癒力を高めるまちづくりの鍼灸師と同じである。 血や気の流れが滞る病気に、血や気の流れを円滑にすることで病気を治す⇒ツボを刺激することで、きっかけを作るだけで、自然治癒力を高め円滑な流れに戻す鍼灸師を例示するとわかりやすいだろう。

リーダーとファシリテーターの違いは、
リーダー⇒引っ張っていく、仕切る、指示する⇒短期的に効果を発揮する場合に適し、
ファシリテーター⇒気づきを促し、みんなが動ける環境やきっかけを作る⇒長続きさせる場合に適⇒そのためには何が必要か・・・待つ姿勢が必要である。  待てるかどうかの判断は
相手に信頼をおくことが求められ、時間がかかる。

10:22
4.ネットワークによる地域力の向上
これからが円卓会議に関する話となる。

ネットワーク型の活動には何が必要なのだろうか? 
ネットワークとは
つながりである。
その最低限の条件が、呼びかけることができるか否かである。
世界的な呼びかけの場はインターネット
WWW(World Wide _Web)
呼びかける場は⇒地域における交流の場である。

そこでネットワーク活動が、どういう特徴を持っているかだが、それは朴容寛氏の「ネットワーク組織論」を参照するとよい。

階層組織⇒他律性(役員が決める)⇒与えられた目的⇒特権性(一部のひとが決める)⇒効率性(意思決定が速い)⇒上位下達⇒命令服従関係。

ネットワーク型⇒自律性(自分も関わった気持ち)⇒目的・価値の共感・共有(皆が異なる目的・先ず共感共有を図る)⇒分権性(小さな単位で20人〜30人が丁度いい)⇒余裕・冗長性(話し合って調整だが無駄と思わない)
円卓会議では、どれだけ前向きの人が集まるかが前提である。

ネットワーク型活動は一見時間がかかる。しかしそれはいろいろなあり、話し合いをすれば後は、想いが共感できているから非常に力強い方向性がでる。 このことをご理解いただきたい。

10:55
Leader階層が悪いわけではないが、その時一つ+αをつけなければいけない。

大阪市立瓜破小学校(平野区)のはぐくみネットのまちづくり井戸端会議の例をお話しして終わりとしたい(参加者の一人の学校支援ボランティアが20uの放置土地を畑にしたいとのつぶやきが他の人の共感を呼び、それがまた次の人の助力で畑となった話)。 

この指とまれ式の目標の共有によるタスクフォース形成で、組織が前提の活動展開の例である。  このことを肩肘張らず軽い気持ちで円卓会議でもご利用願いたい。




                                
  
大阪狭山市市民活動支援センター
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