市民活動支援センタ-事業
平成21年度第一回市民活動支セミナー



市民活動と条例
〜どんなかかわりを持つのでしょうか

講師


関西大学名誉教授
池田 敏雄氏

司会&コーディネーター
大阪狭山市市民活動支援センター所長 白井 隆
日時
平成21年9月19日(土)    9時30〜11時00分
場所 SAYAKAホール コンべンションホール
出席者 100名
まちづくり大学(第5期)受講者 24名
まちづくり研究会  25
一般からの参加  22名  

行政関係者  17名
スタッフ 12


市民活動と条例

                                        
1. ★はじめに〜


秋の連休初日に早朝から沢山お集まり頂いた。 私の専門は、行政法及び地方自治法。 37年間の関西大学勤務中には、行政の仕事に携わる機会もあって、まちづくりとの関係では、レジメ記載のように、1996年に箕面市の市民参加施策推進懇話会の提言をまとめる役もした。

また、2006年には、豊中市の自治基本条例検討委員会をまとめた経緯がある。その経験を踏まえその背景から、何か皆さんにお話できるのではないかと思い今回の講演をお引き受けした。

★自治条例の三つの推進パターン


箕面市の例では、その提言に基づき、箕面市市民参加条例、及び 箕面市まちづくり理念条例が施行されている。 その当時、市民が行政に積極的に携わることを募集するような内容の提言だったので、全国的注目を集めた。 そのようなまちづくり条例などは、市長が熱心な場合は、市長主導の形で議会を動かした例である。

また逆に、議会がまちづくりや自治基本条例に熱心な議員奔総で市長を動かす議会主導のパターンもある。  いま一つは、市長や議員はあまり熱心でないが、市民住民の主導で条例ができる場合もある。

この三つのパターンのどれかで推進されることが多い。

2. ★自治基本条例制定の動向

では、本日のテーマである市民活動と条例に関して、先ず自治基本条例とは何かであるが、自治体の運営全体に関してその理念、原則、制度を定めて、その自治体のいわば憲法的な位置づけがなされる条例のことである。

これがいつ頃から意識されはじめたかは、昭和48年(1973年)に川崎市で、都市憲章原案が市議会に提案されたのが最初である。 その当時全国的に革新系の市長さんが多かった背景もあって、その時かなり斬新な提言が取り交わされた時代である。

川崎市の原案では、三篇からなっていた。
第一篇は、平和・市民主権・自治といった都市存立の基礎要件としての市民主権など、公開と参加を理念とする自治体運営
第二編は、人間都市川市機の創造⇒都市づくりの基本構想として先導的な政策ビジョン
第三編は、条例の最高性・改正(有権者総数の三分の一以上の要求で住民投票
これが現在の基本条例の原点みたいなものであったが、残念ながら当時の市議会でこれは、否決されたのである。

2000年以降では、ニセコ町や伊丹市のまちづくり条例、杉並区や川崎市、静岡市、甲府市のような自治基本条例等の条例名で自治体運営の基本理念・基本原則などを盛り込んだ「自治体憲法」と位置付けられる各自治体の条例制定が顕著に見受けられるようになった。

2009年6月現在では、全国1800市区町村のうち、185団体がこれを制定している。

それでは、大阪府では、どうであろうか・・・以下9自治体で自治基本条例が制定されている。

@箕面市市民参加条例・まちづくり理念条例
A岸和田市自治基本条例
B大東市自治基本条例
C池田市みんなでつくるまちの基本条例
D八尾市市民参画と協働のまちづくり基本条例
E吹田市自治基本条例
F豊中市自治基本条例
G柏原市自治基本条例
H阪南市自治基本条例


など名称は個々別々だが、次々と施行された。 しかし現在府下42自治体で、先進性をしめしているのはまだ9団体と言えよう。 大阪狭山市も今、自治基本条例制定過程であるとのことなので、それが施行されれば、10番目となることが期待されるところである。


これを前提に条例とはどんなかをご説明する

3. ★地方自治体の自治立法について

地方自治法とは、地方自治体の組織及び運営に関する基本法である。
(1)地方自治体の方形式、つまりどのような法を制定できるかは、「条例」は、憲法94条により、地方自治体に付与された自治立法権にもとづいて地方議会が自主的に制定する議会立法である。
2)条例の対象となる事項とな何か
地方自治体が処理すべき「地域における事務」及び「法律又は政令で処理すべきこととされている事務」で、
@法律によって全国統一的に処理すべき事項
A財産権の行使の制限
B自治事務と法定受託事務
がその対象となる。

(3)法令と条例の関係
「法令に違反しない限りにおいて」
@法律の未規制事項と法令先占論
A「上乗せ条例」「裾切り条例」「横出し条例」「上積み条例」と法律趣旨解釈論があるが、その場合、最大限帰省立法か、最小限帰省基準か

(4)条例で定めなければならない必要的条件事項
@準民に「権利を課し、または権利を制限する」事項
A「公の施設」の設置、管理や指定管理者に関する事項
B分担金、使用料、加入金、手数料に関する事項
C審議会などの「付属機関」の設置
(5)基本条例の性格
必要的条例事項ではない
前文が定められる例が多い
訓示規定・プログラム規定で構成されるが非法規的で罰則規定がない。
基本条例の実施するための条例等に対して、法令に対する優越性はないが、指導的、優越的、誘導的、指針役割を担う
               
・・・ということなどを知っていただき(現在時刻10時50分)、時間が無くなってきたので、
4.条例の制定に見られる効能
5.条例に制定手続き
の二つの項目を省略して、

6.地方分権と市民活動の活発化
 
ゆとり社会に基づいて自己主張・自己決定ができるようになった時代背景。

7.★自治基本条例制定の意義についてお話する

国が補完性の原則といっているように、本来あるべき国際社会への対応とかの様に、国は国でなければならぬことをやっていく、市町村ができることは市町村、できないことは都道府県、都道府県でできないことを国がやるといった
Subsidiary(補完性の原則)の関係でやっていくことが示されているので、市町村の役割は非常に増え責任を持たねばならぬことになる。 従って条例を作る時自らの知恵で条例を作らねばならぬようになってきている。 そこで、首長、議員、職員、市民の4者による自治体能力の向上が求められるようになってきた所以である。

自治体能力としては、1990年以降、分権・自治への改革のうねりが強まり、自治体が自立し、自己決定・自己責任を果たしていくためには、「参加で市民合意を形成する自治体運営」と「質の高い政策を生む自治体運営」が強くもとめられることとなった。 そういう運営のルールがキチット設定されていると、制度の情報公開がされていることになり、市民参加が具体的な場面で予測でき、市政への信頼感と参加意欲が高まり、非常に市民活動が盛り上がることにつながることを言いたいのである。

8.★おわりに

最後になったが、そういう市民自治が、自治基本条例でより生かされることがはっきりしており、その制定の過程で市民自治が反映されれば、それが本当のテストケースと繋がることになる。 大阪狭山市では、市民自治懇話会を立ち上げ、懇話会で提言がなされ、提言に基づき現在出来上がった条例案が議会で議論されていると聞いた。 これが一種の市民自治のテストケースとなると思う。 

自治基本条例が出来上がった後、それでひと安心でなく、行財政がいかにあるかを条例に従って、条例や計画に活かしていくかを意識して吟味する必要がある。 

自治基本条例とは、まちをどのような方向に向けるか、最終的にはまちづくりをいかにするかに帰すことになる。 今後は、そういうことを一生懸命やっている自治体は先進自治体として胸を張れるが、そうでない自治体ぼんやり自治体になり、2〜3年後に先進自治体の見よう見まねの後追い自治体となる。 

市民自治を生かすには、人材である。 人づくりが必要で人材の発掘が大切。 大阪狭山市では、まちづくり大学とか、研究会があるとの話を聞いている。 「まちづくり」は「ひとづくり」であり、おおいに期待したい。


当日の講演配布資料
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