平成20年度市民活動支援センタ-事業

講演概要速報

平成20年度 
市民活動支援セミナー

第一回 講演会
NPOのこれまで と これから


講師

市民社会研究所長
日本NPO学会顧問

今田 忠さん


1998年のNPO法の成立後10年が経過し、
当初の予想を超えるNPO法人の数に達した。
他方様々な問題が生じているのも事実。
NPOの10年を見据えつつその現状とこれからの課題を考える。

講 演 要 旨(講師未見承)

司会者の方から適切にご案内頂きましたように、今田忠と書いてマコトと呼びます。


199812月からNPO施行以来今年の12月で10年。 各地で10年目の記念フォーラムが行われています。 そこで、NPOのこれまでと今後についてお話します。今日は、Power Pointなどのスライド投影がないので、配布の資料をご覧いただきます。

先ずその前に、NPOの言葉についてお話すると、NPOとは非営利組織、もう一つレジメに記載の国際協力NGOや環境NGOなどのNGO、つまり非政府組織、この二つが対応します。 一般にNPOというと非政府の非営利組織を指します。典型的なのが市役所などの行政です。 私が勤めていた大学や民間の博物館も昔からある広い意味での非営利組織です。

しかし最近では、広い意味でのNPOから区別して、昔の大きな組織でなく新しい市民活動をNPOと呼んでいます。

1.NPO これまで

市民公益活動の台頭

なぜ10年前にこれが生まれたかについては、1980年頃から市民が自ら公益を担うボランタリーな活動が台頭しました。国際協力NGO、住民互助型の高齢者福祉団体、環境NGOなどの非営利団体です。 シャンティやバングラディシュ支援のシュプラニールなどです。この様ないろいろな団体ができてきたのが1980年頃です。その他高齢社会問題を含む住民福祉団体なども台頭してきました。また、時間預託制から始まった住民互助型の福祉団体も現れました。子供保育の問題、児童不登校の子供たちに対するフリースクールの組織も出てきました。 いわゆる社会が複雑化したからでしょう。そういった問題を自分たちで解決していこうよ・・・といった形が現れたのが概ね1980年頃からです。

企業市民の思想

それと同時に、1980年代後半に日本企業の海外進出が盛んになり、1985年のプラザ合意で、円高が進む中、輸出企業が海外に工場移転を始めたのです。米国に工場を作ることになったのです。

それがある意味でNPOや市民活動の意識を日本に逆輸入させるキッカケとなり、1990年代には大企業の思想がガラッと変わり、その頃から企業がむしろNPO組織を育てねばならぬとの意識に変化したのです。

19914月には、経団連の中に社会貢献部発足、企業の利益の1%プランが生まれています。 大阪では大阪商工会議所が中心となって199111月財団法人大阪コミュニティ財団を設立し、社会貢献に資する動きがそれです。

新法制定への動き

ここで問題がでてきたのは、そういった組織がなかなか法人になれないことです。

市民公益活動団体が簡易に法人格を取得でき、かつ税制優遇を得られるような制度の新設を求める動きが出てきます。

19943月NIRA(総合研究開発機構)の委託研究「市民公益活動基盤整備に関する査研究」発表

199411月「市民活動を支える制度をつくる会シーズ」発足

明確に市民活動にたいして法人格を与えるということで、市民活動促進法が制定されました。

その直後19951月の阪神・淡路大震災が襲い、全国からボランティアが集まり、市民ボランティア活動に対する理解が加速されました。

NPO法制定

19976月市民活動促進法衆議院通過。しかし参議院で否決。

そこで、市民活動を12分野から17分野に拡大し、市民活動の呼び方をやめて活動の中身を促進する表現で 19983月特定非営利活動促進法成立(NPO法)12月施行されたのです。これがNPO法成立のいきさつです。

NPO法の特徴とはなにか

主務官庁の許認可から⇒所轄庁の認証へ(簡易化)主務官庁の監督から⇒情報公開による市民の監視へ(自由な法人)

民法34条「祭祀、宗教、慈善、学術、技能その他公益に関する社団又は財団にして営利を目的とせざるものは主務官庁の許可を得て之を法人と為すことを得」第67条「法人の業務は主務官庁の監督に属す」

認定NPOの実現

200110月、認定特定非営利活動法人制度創設(租税特別措置法)パブリック・サポート・テスト制を採用     

2003年度税制改正で要件緩和、みなし寄付金制度導入

2008年度税制改正で要件緩和

20086月現在3万余のNPO法人のなかで寄付優遇措置は87法人しかありません。

事業型NPOの発展

サービス型のNPO団体で、福祉サービスなど事業を展開するコミュニティ・ビジネス、社会的企業の概念が伸びてきました。そのためには、NPOといえども経営努力が求められマネジメント重視がクローズアップされています。

行政との協働の進展

この大阪狭山市民活動支援センターも場所は市が提供、運営を民間の形で行政と市民活動が一緒になって活動を促進しようとする動きです。 特に地方自治体で行政サービスの一部をNPOにやってもらう、あるいは、助成金や補助金を出す形がおこなわれるようになりました。 

・・・・という具合にこれまで10年が経ったのです。              2.NPO の これから

では、これからどうなるか・・・ということですが、

NPOの課題

財政、人材、専門性NPOは基本的には小さいしお金がない・・・

介護保健や障害者でやっているサービス型NPOと他のNPOの差はきびしいようです。それだけに専門的な人材が必要です。 しかしその年収は非常に低いのが現状です。

そこでNPOが狙っているのは、企業の経験者、それを社会に役立たせる。生活がそれなりに安定しているでしょうが、交通費程度で活動されるが、やはり必要なものはほしい。

NPOに基本的に欠けているのは、経営の専門性。企業の経験のない専業主婦が始めたようなNPOでは、組織経営の経験者が少ないようです。その辺のところが皆さんに期待されている点でしょう。 稼ぐためのビジネス感覚も必要。

NPOは儲からないので、社会に支えてもらう賛助金、行政から補助金をもらうとかが必要となってくる。 これがいわゆるFund Rasing または Fund Developmentの思想。つまり、あの手この手でお金を集める手法が求められています。 事業収入だけでなく、寄付金、チャリティコンサート、その他に対する仕掛けの企画が必要でしょう。 イギリスのOX1ショップなどもその例。 最近はNET募金のサイトもあります。ガンバNPOなど、私がここの運営委員をしているので、インターネットで覗いてみてください。ネット募金は災害の時に威力を発揮します。これらはNPOに求められる専門性です。

企業のCSRとNPO

最近は企業とNPOの協働が随分すすんできました。SCRつまりCorporated Social Responsibility(企業の社会的責任)です。1990年代から企業の社会貢献が意識され1%クラブなどの例を申し上げましたが、現在の社会貢献とは、企業のメリットのもとに、NPOとのWin-Winの形を取っています。従前は企業が財団法人を作っていてそれがいろいろな社会支援をするのが主流でしたが、企業の組織の中で一体となって社会貢献を行うように変化しています。 CSRになってくると、企業とNPOの協働の形に変化しました。

NPOを支援することにより、企業側にいかなるメリットがあるかのWin-Winの関係構築です。 例えば環境問題などは、環境NGOが協力し環境レポートやその評価も担当する形です。 

新しい法人制度の動き

社団法人・財団法人法は、設立そのものはものすごく簡単になりました。

200812月施行、一般社団法人は社員2名、一般財団法人は300万円の財産があれば準則主義により設立、税制優遇を受けるには公益認定をうけなければなりません。

会社法。資本金ゼロで株式会社設立が可能、合同会社(LLC)制度新設

有限責任事業組合(LLP)新設。これは組合でなので法人格はありません。

ワーカーズ・コレクティブ法。現在、法制化の運動が進められている。正式には「協同労働の協同組合法」。超党派の国会議員連盟も結成中。コミュニティビジネスには向いている形です。

広義のNPOとNPO法人  

新公益法人、社会福祉法人とのバランス

そういうことでいろいろ新しい法人格ができていますが、それなら、いまある社会福祉法人とかNPO法人と、新しい公益法人をどう考えていくかです。 社会福祉法人は寄付金控除が、同じ仕事をしていても100%認められたりして税制優遇上でははるかに有利。これからのNPOの動きとしては少し問題となるところです。社会福祉協議会はある程度の使命を終えたようですが、市民活動支援センターそれに代わる能力と蓄積ノウハウを持ちあわさないのが現状でしょう。 

市民社会とNPO

NPOと政治の考え方

最後に、NPOは基本的には市民が行う公益活動。 行政の関与を少なくして市民が自主的に公益活動を進めるのが基本的な考え、そのためには、いろいろな規制を外す必要があります。 そういう政治活動に関与しては駄目だという問題でもありません。

NPO法第二条第2号二ロ「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと」 第2号二ハ「特定の公職の候補者若しくは公職にあるもの又は政党を推進し、支持し、又はこれらに反対することを目的とするものでないこと」とありますが、自分たちの事業のなかで、こういった政策を実現したいとか、推進したいとかの活動は禁止されているものではないので、そのような活動を通じて市民活動をもっと活性化していく必要があるのではないか思うものです。

本日の司会
市民活動支援センター 
森隆夫
   「NPO これまで と これから」

当日配布レジメは
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        予告
第二回市民活動支援セミナー
平成20年9月・10頃を予定


参加申込・お問合せ先

大阪狭山市市民活動支援センター
TEL/FAX  072-366-4664
〒589-0021
大阪狭山市狭山1-862-5